10 May 2016

Saul fia (Son of Saul) | サウルの息子

Director: László Nemes
Writers: László Nemes, Clara Royer
Stars: Géza Röhrig, Levente Molnár, Urs Rechn
2015/Hungary
★★★★☆

ホロコーストを描いた映画は多々あれど、この『サウルの息子』は他のどの映画とも違ってましたねー。

主人公のサウルはハンガリー系ユダヤ人。アウシュヴィッツの強制収容所で「ゾンダーコマンド」に選出された彼は、日々、同胞の処刑とその後始末に携わっています。

この映画、ほぼ正方形の狭い画面のほとんどがサウルの顔のアップ。背景はボンヤリとしか映っていないのだけど、裸の死体が転がってたりするのは分かるわけですよ。
監督のインタビューにあるように、「サウルが見聞きしたものだけを見せる」という意図で撮影されていて詳細が見えない分、想像力が掻き立てられて、怖い。なんだか饐えたような臭いが画面から漂ってくるような。

さて、ここからは相当内容に触れていきます。この映画を観る予定の方は、そっとウィンドウを閉じてくださいまし。
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わたし自身は、この映画を観るまで「ゾンダーコマンド」なる人々のことを知りませんでした。他の囚人たちより優遇されているものの、最終的には処刑されることを知っている彼らは、記録を残そうとするんですねー。こっそり写真を撮影したり、紙に書いたりしたものを収容所のあちこちに隠して。
いつ果てるとも知れない日々の中で、後世に伝えようとする姿に打たれました。あんな状況の中で未来を見ることができるなんて。

で、タイトルにもあるように、サウルは息子(あるいは彼が息子と信じ込んでしまう少年)の遺体を見つけて、ユダヤ教の教義に則って埋葬すべく奔走します。
これがねー、「人間としての尊厳を、云々」 というより、仲間を危険に陥れる迷惑行為、にしか見えなかったのですよ、ワタクシには。実際、祈祷してもらおうと探し出したラビは彼のせいで殺されちゃうし、彼のために遺体を隠しておいてくれた医師は、彼が勝手に遺体を運び出しちゃったせいで難しい立場に追い込まれちゃうし。。。挙句の果てに反乱を企てた仲間に託された火薬を落としちゃうという。
でも、サウルの狂気すら宿っているような眼を見てると、あぁ、この人はただただ何かに縋りたいのかなあ、と。

この監督の同じような手法で撮影した短編があるのですが、見たくないものを見なかったことにする人間の業の深さを突き付けられて、「うっ」となります。

 

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