10 October 2017

Ninagawa Company Macbeth | NINAGAWA・マクベス

Writer: William Shakespeare
Stars: ICHIMURA Masachika, TANAKA Yuko, TSUJI Kazunaga, OISHI Keita, SAGAWA Tetsuro
 Director: NINAGAWA Yukio
★★★★☆

1985 年に初めて英国の地を踏んだ蜷川幸雄演出作品『NINAGAWA・マクベス』。この度、蜷川氏の一周忌追悼公演として再び英国に帰って来ました。
 
この作品、通称「仏壇マクベス」 と呼ばれているそうで、2 人の腰の曲がった老婆がそれこそ仏壇の扉のようなものを開くところで芝居の幕が開きます。このおばあちゃんたち、原作にはないそうですが、舞台の両端に座ってずーーーーっと事の成り行きを見てるんですねぇ。お弁当食べたり、写経したりしながら。貧しい農婦といったいでたちで、高貴な登場人物たちとワタクシたち庶民を繋ぐ役どころだったのでしょうか…。

そして幕開けの最初のシーンでいきなり度肝を抜かれました!
空を稲妻が走り桜吹雪が舞い散る中、3 人の魔女たちが怪しげな踊りを繰り広げていて…衝撃的な美しさ、でありました。

蜷川氏のお芝居は毎回舞台美術も楽しみなのですが、今回は群を抜いておりましたねぇ。終演後にプログラムを見たら、「Set Designer Kappa Senoh」とあるではないですか!妹尾河童氏の仕事だったんですねぇ。そりゃあ、細部にまで神経が行き届いてるわけだ。 

今回、初マクベスだったのですが、マクベス夫人の悪女っぷりに感服いたしました。夫の出世を自らの野心にしちゃって、その実現のために夫をなだめすかしたり、脅したりしながら操るわけですよ。田中裕子さんのマクベス夫人は凄味がありながら、でも夫のことを愛しているのだな、というのが伝わってきました。
だけど、そんなマクベス夫人が第二幕では急に罪悪感に苛まれたのか夢遊病になっちゃって、挙句の果てには狂死、ってのは何だか納得がいかないわぁ。悪を全うして欲しかった(笑)
市川正親さんのマクベスは隠し切れない人の好さが滲み出てましたねぇ。

1 つだけ難を付けると、全編をとおして 3 曲くらいの同じ音楽が繰り返し使われていて、特にここぞというときにバーバーの「弦楽のためのアダージョ」が大音響で流れるのが、感動しろ~、と強要されているようで何だかなぁ、でありました。

カーテンコールでは舞台に蜷川氏の写真が飾られていて、市川正親さんが蜷川氏に向かってガッツボーズしちゃったりして。今さらながら、亡くなった、ということが実感として胸に迫って来て思わず涙してしまったのでした。