20 November 2016

I, Daniel Blake | わたしは、ダニエル・ブレイク

Director: Ken Loach
Writer: Paul Laverty
Stars: Dave Johns, Hayley Squires
2016/UK=France=Belgium
★★★★★

ケン・ローチ監督の最後の作品、と言われている『わたしは、ダニエル・ブレイク』を観に行ってきました。
今年のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したこの映画、主人公ダニエルが不条理なまでに複雑な福祉システムに翻弄される姿が描かれています。先日のクエスチョン・タイムで、労働党のコービン党首がメイ首相に「ご覧になってはいかがですか?」と勧めておりました。

以下、映画の内容にかなり触れております。これから観に行く、という方はそっとウィンドウを閉じてくださいませ。。。
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さて。ニューキャッスルで腕のいい大工として働いていたダニエルは、心臓発作を起こして医者から仕事に復帰することを止められます。
映画冒頭、傷病手当を受給したいダニエルと審査担当の女性の電話での会話が流れてきます。この担当者がね~、もう "ザ・お役所" で(実際は行政から依頼された企業、らしいのですが)。マニュアルどおりというか、融通が利かないというか。そんな彼女に戸惑いながらも、ユーモアで応戦するダニエル。この時点で映画館中の人が彼に声援を送っていたハズ。

傷病手当の申請が何故か「働くことができる状態にある」という理由で却下されたダニエルは、ならば、と失業手当を申請しようとします。
これがまた茨の道で、電話をかけても延々と待たされ、慇懃無礼な担当者は型通りの質問をするばかりでこちらの質問には答えてくれず、申請はオンラインでしか受け付けてもらえず。。。文字通り右往左往する(させられる)ダニエルを演じたデイブ・ジョンズは、コメディアンだそうで、追い詰められながらも、どことなくとぼけた味わいのあるダニエルを好演しておりました。あと、この人がうちのご近所さんにソックリで。そういう意味でも、一層感情移入してしまったのでした。

さて、そんなダニエルは、ひょんなことから2人の子供と一緒にロンドンから越してきたシングル・マザーのケイティと知り合います。2人は助け合いながら交流を深めてゆくのですが、映画ではこのケイティをとおして、これでもか、これでもかと「貧困」というものを見せつけてくるのです。

この映画がスゴイのは、重たいテーマを扱いながらもエンターテイメントとして成立していること。そのおかげで、作品のメッセージがすんなりと入ってきたように思います。

ところで、6月の国民投票で Brexit が決まったとき、「信じられない!」と驚きを隠せないわたしに、友人の1人(残留派)が「それは、あなたがエリート(特権階級)だからだよ」と言ったのですね。そのときは、よく意味がわからなかったのだけど、この映画を観て、少なくとも現行のシステムで生活に困窮していないわたしは、エリートかどうかはともかく、非常に幸運なのだな、と。
ダニエルやケイティのように、ほんの少し足を踏み外しただけで、救済されることなく生活が立ち行かなくなる、という立場だったら。 そりゃあ、「現状維持」を象徴する「EU 残留」じゃなくて、「現状を変えてくれ!」と抗議すべく「離脱」に投票するよなぁ。。。そんなことを思いながら、どんよりとした気持ちで映画館を後にしたのでした。。。

8 November 2016

Modernismo in Catalonia 1 | カタルーニャ モデルニスモを巡る旅 1

先週のこと。
冬時間が始まってグッと寒くなってきた英国を脱出、未だ太陽輝くバルセロナへと行って参りました。今回の主な目的は、ガウディをはじめとするモデルニスモ建築家たちの作品を見学すること、でありました。

やっかいになった友人宅からのバルセロナ旧市街の眺め。
なんだか中東の街のよう。

最初に訪れたのは、バルセロナ近郊のコロニア・グエル。


「コロニア・グエル」は 、ガウディのパトロンとしても知られるエウゼビ・グエルが、自身が経営する紡績工場で働く従業員のために1890年に造ったコロニー。当時第一線で活躍していた建築家による建物が並んでいます。


コロニーには、従業員の住居はもちろん、劇場、病院、学校、教会などがあって、小さな街のよう。言わば、生活に必要な施設がすべて揃った社宅、ですな。


インフォメでもらったパンフレットによると、エウゼビ・グエルは「従業員の社会的向上を追求し、それを文化への後援という形で還元」していたそう。日本が「あゝ野麦峠」だった頃に、カタルーニャには充実した福利厚生を受けながら働く人々がいたのですねぇ。


紡績工場の高い煙突。現在は紡績工場として稼働していないそうですが、何かの会社ではある様子でしたよ。
何故か壁に鼻がくっついた建物が。。。


最後に向かったのがコロニア・グエルのハイライト、ガウディ設計の教会(地下礼拝堂)。
本当は高い塔が建つハズだったらしいのですが、サグラダファミリアにかまけたガウディがプロジェクトを放棄(!)、建設が頓挫したそうで。。。

入口扉上のモザイク。
インフォメ2階のミュージアムに各モチーフの説明がありました。


中に入ると、思わず「うわぁーーー」と声が出ます。ガウディ・ワールド炸裂。

このステンドグラスの模様は十字架と「切り開いたパイナップルを下から見た図」を組み合わせたものだそう。
十字架とパイナップル。。。天才の発想は凡人のワタクシの想像を超えております。

教会の屋根からコロニア・グエルを臨む。
向こうに現代の労働者住宅が。

この日はインフォメでもらった地図とイヤホンガイドを片手に街中を歩き回ったのですが、オリエンテーリングみたいで楽しかった!
バルセロナ市内から行く場合は、往復の電車代・入場料・イヤホンガイドがセットになったお得なチケットあります。


バルセロナに戻って、モンジュイックの丘から夕暮れの街を眺めました。
噴水手前の4本の柱はカタルーニャの旗を表しているのだそう。「カタルーニャの旗」モチーフ、いたるところにありました。
週末の夜は噴水で「マジック・ファウンテン」なるショーが開催されます。別の日に見たのですが、かなり大がかりで一見の価値あり、でしたよー。

30 October 2016

BFI London Film Festival 2016 | ロンドン映画祭 2016

映画ラバーの祭典、ロンドン映画祭。今年は10月5日から16日かけて開催されました。
今年観たのは、是枝裕和監督の新作『海よりもまだ深く』と三船敏郎のドキュメンタリー『Mifune: The Last Samurai』、そしてイザベル・ユペールの大ファン、なツレアイのお供で観に行ったイザベル・ユペール主演の新作2本です。

ではでは、忘れないうちに感想をば(以下、かなりネタばれとなります)。




 After The Storm
Director: KORE-EDA Hirokazu
Writer: KORE-EDA Hirokazu
Stars: ABE Hiroshi, MAKI Yoko, KIKI Kirin, KOBAYASHI Saatomi
2016/Japan
★★★★★

ロンドン映画祭の常連、是枝監督の新作。毎年楽しみにしているのですが、実は『歩いても 歩いても』より後の作品は今一つピンと来なかったのですよ。
でもね、これは良かった!久々に是枝節炸裂してました!

築40年(だったかな?)の団地を舞台に、大人になり切れない男とその母親、別れた妻と子どもが、ある台風の夜を共に過ごして、というこの映画、 『歩いても 歩いても』の姉妹編のような感じでした。阿部寛が息子で、樹木希林がお母さんという配役が同じで、阿部寛の役名「良多」も同じ。タイトルが昭和歌謡からとられているところも同じですよね~。
父親のようになりたくない、と思いながら、気付けば父親そっくりになっている良多。これ、わかるなぁ。ワタクシも自分が言われてイヤだった親の口癖を口にして愕然としたりすること、あります。
なりたかった大人、思い描いていた生活。すべてが思いどおりになる訳ではないけれど、進んで行くしかないんだよね。と、言葉にしちゃうとありきたりなことをしみじみと思いました。

それにしても、ニコニコしながら毒のあるコメントをサラリと言っちゃう、決して敵に回したくないおばあちゃんを演じさせたら樹木希林の右に出るものはいませんな。


 Souvenir
Director: Bavo Defurne
Writers: Jacques Boon, Bavo Defurne, Yves Verbraeken
Stars: Isabelle Huppert, Johan Leysen, Kévin Azaïs
2016/Belgium = Luxembourg = France
★★★☆☆

とってもチャーミングなラブコメディ。

パテ製造工場で働くリリアン。単調な毎日を過ごしている彼女ですが、実はかつてユーロビジョンで ABBA と競り合った歌手だったのです。
そんなリリアンが、「父親が彼女のファンだった」という青年と出会って、恋に落ち、 かつての野心を思い出します。

歌うシーンは、本人が歌っているそうで、垢抜けない振り付けも彼女がやるとなんか素敵に見えちゃう、という。

この映画の最大の収穫は、シリアスな役どころの多いイザベル・ユペールのコメディエンヌとしての側面を発見できたこと、ですね~。あ、あと、かつてのアイドルを前にして舞い上がっちゃう青年の父親もツボでした。


 Elle
Director: Paul Verhoeven
Writers: Philippe Djian (based on the novel by), David Birke
Stars: Isabelle Huppert, Laurent Lafitte, Anne Consigny, Charles Berling
2016/France = Germany = Belgium
★★★☆☆

イザベル・ユペール主演の新作2本目。
原作が大好きな恋愛映画『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ジャンの小説で、監督が『ロボコップ』や『氷の微笑』のポール・バーホーベンということで、興味津々だったのですが。うーーーーん、何と言うか、どう判断してよいのか悩ましい映画でありました。

映画は、ゲーム会社で成功しているミシェルが何者かに強姦されるシーンで幕を開けます。実はミシェルには父親が殺人を犯したという過去があり、その経験から彼女は警察をまったく信用していなくて、自分で犯人を探し出そうとするのですが。。。

というスリラーなのですが、コメディでもあって、笑った後に軽く罪悪感にかられるという妙な感じ。そして、セクシャルなシーンにアダルト・ビデオ的な「男のファンタジー」を見てしまって、居心地悪かったり。

イザベル・ユペールの衣装がめっちゃスタイリッシュで、どこの洋服だろう?なんてことも気になりました。


 Mifune: The Last Samurai
Director: Steven Okazaki
2015/Japan
★★★★★

今年の映画祭の締めくくりは三船敏郎の生涯を追ったドキュメンタリーでした。
日本のチャンバラ映画の歴史を紐解きつつ、三船敏郎の生涯、そして黒澤明監督との関係を、当時の関係者のインタビューを入れつつ紹介しています。

もうねー、改めて三船敏郎のカッコよさに痺れましたね~。
今の映画って、こういうギラギラした色気のある役柄ってないですもんねー。

この映画の中で、三船敏郎が若い兵隊の教育係をしていたという大戦中のエピソードが出てきたのですが、若い兵隊、というのは特攻隊員で。今から出撃する、という特攻隊員の写真が出てきたのですが、もうねー、それが、まだ声変わりもしてなさそうな坊主頭の男の子で。なんだか、この写真が頭に焼き付いちゃって、やるせないです。

マーティン・スコセッシ監督が三船/黒澤の魅力を語っていたのですが、この人、相当な映画オタクですね~。